難削材とは? 種類や加工におけるポイントについて解説します
現代の工業技術の進化に伴い、私たちの日常生活や先端産業には、加工が困難な特殊材料「難削材」が欠かせない存在となっています。
しかし、その加工には一般の材料とは異なる特別な技術と知識が求められます。 そこで今回は、難削材の基本的な特性から、その種類、そして加工におけるポイントまでを詳しく解説します。 難削材の活用を検討中の企業様は、ぜひ参考にしてみてください。
難削材とは?
難削材とは、通常の加工方法では容易に削ることができない、特殊な物性を持つ材料のことです。
これらの材料は、その独特な特性のために、特別な技術や機械、工具が必要とされます。
難削材の加工技術は、多くの先進産業において不可欠なものです。特に航空宇宙産業では、エンジン部品や構造材料として、その耐熱性や強度が要求される状況で使用されます。
また、医療機器産業においては、人体への埋め込みや外科手術に使われる器具の材料として、その生体適合性や耐腐食性が評価されています。電子部品の分野においては、耐熱性や導電性の要求から、難削材が重要な役割を担っています。
難削材の条件や特徴
難削材は、以下のような特徴を持つことが一般的です。これらの特性は、加工において特別な注意が必要とされる要因となります。
硬い
硬さは耐久性や耐摩耗性に寄与する一方で、加工においては大きな課題となり得るものです。通常の加工工具では容易に削ることができないため、特別な高硬度の工具や高速の加工方法が必要とされます。
柔らかい
一部の難削材は、柔らかく加工時に変形しやすい特性を持っていることから、精密な寸法制御が難しく、加工時の微細な力の管理が求められます。特に薄い部品や複雑な形状の加工において、この特性は重要な考慮事項となります。
加工硬化
難削材は、加工中に材質が硬化することがあります。この現象は、加工時の熱や応力によって材料が硬くなり、さらに加工を困難にする原因となります。加工硬化は、特に切削や研削のような加工方法で顕著に現れるため、加工パラメータの慎重な調整が必要です。
ねばり強い
切削時に材料が刃にくっつきやすい性質を持つ難削材もあります。このねばりの原因は、材料の化学的性質や熱的特性によるものです。刃物への材料の付着は、切削精度の低下や工具の摩耗を早めるため、特別な冷却技術や工具コーティングが求められます。
切粉の伸び
切削時に材料が刃にくっつきやすい性質を持つ難削材もあります。このねばりの原因は、材料の化学的性質や熱的特性によるものです。刃物への材料の付着は、切削精度の低下や工具の摩耗を早めるため、特別な冷却技術や工具コーティングが求められます。
脆い
加工時に割れやすい脆性を持っている難削材もあります。この特性は、特に打撃や圧力が加わる加工方法で問題となります。脆性材料の加工には、力の加え方や加工速度の慎重な調整が必要です。
むしれやすい
加工時に材料が切削工具によってうまく削り取られず、材料がむしれやすくなることも特徴として挙げられます。そのため、加工面に小さな凹凸が残り、所望の面粗度を実現するのが難しくなる点に注意が必要です。
切粉溶着
加工中に高熱が発生することで、切粉が工具に溶着する現象が起こることがあります。特に高速加工や重切削時に見られ、工具の摩耗や破損、加工品質の低下の原因となります。この問題に対処するためには、適切な冷却や切削条件の最適化が必要です。
代表的な難削材の種類
難削材はその加工困難性から多様な産業分野で使用されており、その種類は非常に幅広いです。ここでは、代表的な難削材をいくつかピックアップしてご紹介します。
高融点材
高融点材は、文字通り非常に高い融点を持つ材料であり、極限の温度条件下でもその性質を保持することができます。
これらの材料は、高温での強度と安定性が要求される先進的な産業分野で重要な役割を果たしています。例えば、航空宇宙、軍事技術、核エネルギー、高度な電子機器などの分野で不可欠です。
- タングステン
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非常に高い融点と硬度を持ち、耐熱性や耐摩耗性が求められる場面で使用されます。電球のフィラメントや電子機器の電極などに使われます。
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高い耐腐食性を持ち、化学反応器や医療用インプラントに用いられます。
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- ニオブ
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低温環境での超伝導特性を持つため、科学研究の分野で重要です。
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- 純金属
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一般に金属は合金化されることが多いですが、純金属も特殊な用途において用いられます。
ニッケル合金
ニッケル合金は、その優れた耐熱性、耐腐食性、そして高い機械的強度から、特に過酷な環境での使用に適した素材です。
これらの合金は、ニッケルを主成分とし、クロム、鉄、モリブデンなど他の元素を加えることで、特定の使用条件における性能が大きく向上します。例えば、航空宇宙産業ではジェットエンジンの部品として、また化学工業では腐食性の高い環境下での反応器材料として広く利用されています。
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高温環境での強度と耐酸化性が非常に高く、ジェットエンジンや化学プラントで使用されます。
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その他、コバルト系合金に含まれる「パーメンジュール」は熱処理によって磁性を制御できるため、記録メディアや磁気スイッチに用いられます。
貴金属
貴金属は、その美しさと希少性で古来より価値を認められてきましたが、現代ではその特有の化学的、物理的特性により高度な工業用途にも広く使用されています。
このカテゴリーに属する純銀やプラチナなどは、優れた導電性、耐腐食性、化学的安定性を持ち、電子部品、触媒、精密機器などの分野で重要な役割を果たしています。
- 純銀
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高い導電性と反射率を持ち、電気接点や鏡の製造に使われます。
- プラチナ
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化学的に非常に安定しており、触媒や宝飾品に使用されます。
脆性材
脆性材は、その名の通り、圧力や衝撃に対して脆い特性を持ちながらも、高い硬度と優れた耐熱性を兼ね備えた素材群です。
- セラミックス
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高い硬度と耐熱性を持ち、エンジン部品やカッティングツールに使用されます。
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純度が高く、光学機器や半導体製造に不可欠です。
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難削材の効率的な加工条件
難削材を効率的に加工するためには、その特有の性質に適応した特定の加工条件を考慮する必要があります。
適切な工具選択
難削材の加工には、特に高硬度や高耐熱性を備えた工具の選択が不可欠です。
たとえば、超硬合金、セラミックス、ダイヤモンドコーティングされた工具などが、これらの材料の高い硬度や摩耗に対応するために用いられます。 適切な工具は、加工中の効率と精度を大幅に向上させると同時に、工具自体の耐久性も高めます。
低速高トルク加工
難削材の加工では、材料の破損や不必要な熱の発生を防ぐために、低速かつ高トルクでの加工が推奨されます。
この方法により、切削抵抗を適切に管理しつつ、材料の内部ストレスを最小限に抑えることができます。
冷却液の使用
加工時に発生する熱は、工具の摩耗や材料の変質の原因となります。
適切な冷却液の使用は、これらの問題を大幅に減少させることができます。 冷却液は、切削部位の温度を下げ、切削粉の除去を助けると同時に、工具と材料の摩擦を減少させます。
微細加工技術
難削材の加工においては、特に精密な寸法制御が求められます。
これを実現するために、微細加工技術の採用が重要です。例えば、微細な切削工具や高度な数値制御(NC)技術、レーザー加工などが利用されます。
工具の定期的な交換
高い摩耗率に対応するため、工具の頻繁な交換が必要です。
難削材の加工では、通常の材料よりも高速で工具が摩耗するため、定期的な交換や点検が不可欠です。 工具の状態を常に最適に保つことは、加工精度を維持し、非生産的なダウンタイムを減少させるために欠かせない観点です。
難削材の加工は高洋電機にお任せください
高洋電機では難削材の加工に対応するための最新の設備と膨大なトライ&エラーで培った経験を有しています。
未知の材質でも、切粉の状態、刃物の摩耗状態、切削面や切削音により適正な条件を導き出すことが可能です。
お客様のニーズに合わせた最適なソリューションを提供していますので、難削材の加工に関するご相談やお見積もりのご依頼は、いつでもお気軽にご連絡ください。