パーマロイとは? |幅広い分野で活用される磁性材料

ニッケルと鉄を主とした「パーマロイ」という合金は、高い透磁率と低い保磁力を有しており、磁気シールド、電子機器部品、変圧器のコア、磁気センサーなど、多岐にわたる産業で不可欠な材料となっています。

この記事では、パーマロイの特性・用途例・加工性について詳しく解説します。

目次

パーマロイとは?

パーマロイは、ニッケルと鉄を主とした合金です。それぞれ組み合わせの比率により、その独特な物理的および化学的性質が生み出されます。

なお、弊社で加工依頼をいただくことの多いパーマロイは、PBパーマロイ(Ni45%・Fe55%)とPCパーマロイ(Ni77%・Fe14%・Cu5%・Mo4%)の2種類に分類されます。

パーマロイの特性

高透磁率

パーマロイは、その独特な磁気的性質によって、多くの産業分野で重宝される合金です。特に、その高い透磁率が注目されています。

透磁率とは、物質がどれだけ磁化しやすいかを示す指標であり、パーマロイの場合、外部からのわずかな磁場変化にも敏感に反応します。

この特徴は、微細な磁場の変動を捉え、応答する能力が非常に優れていることを意味し、その結果、電子機器の精密な動作を保証するのに役立つのです。

低保磁力

パーマロイは低い保磁力を持っているため、磁化後に外部磁場が取り除かれると、すぐに磁化が解除される特徴があります。保磁力が小さいということは、磁場が消えた後に残る磁気の影響が非常に少ないということであり、これが重要な利点となります。

特に、再利用可能性やリセット可能性が求められる磁気メモリデバイス、センサー類において、この性質は極めて価値があります。

磁気シールド性能

パーマロイの磁気シールド能力は、その高透磁率と低保磁力の組み合わせによって、優れた効果を発揮します。磁気シールドは、不要な磁場や磁気ノイズから機器を保護するために使用される材料で、パーマロイはこの用途に非常に適しています。

高透磁率により、外部からの磁場を効果的に吸収し、低保磁力により、その磁場を保持せずに済みます。その結果、磁気ノイズに対する防御壁として機能し、機器の性能を維持することができます。

集磁作用

パーマロイは集磁作用を示します。これは、入力される磁場に対して、出力としてはるかに大きな磁化を生み出す能力を意味し、磁場の増幅作用があります。

この特性は、磁気センサーや電力変換器のコア材料としてパーマロイを理想的な選択肢にします。センサーでは、微小な磁場の変化を正確に検出することが求められ、変圧器やトランスでは、効率的な磁気エネルギーの変換が必要とされます。パーマロイの集磁作用により、これらの要求を満たすことができます。

熱処理による特性向上

パーマロイは熱処理によってその特性をさらに改善することが可能です。1000℃以上の高温で磁性焼鈍処理を施すことで、透磁率が大幅に向上し、その結果として、特定の用途での性能が顕著に強化されます。

磁性焼鈍処理によって、材料内の微細構造が最適化され、磁気的性質が改善されるため、より高い性能を発揮する材料を得ることができるのです。

パーマロイの用途例

パーマロイは高透磁率と低保磁力という特性を活かし、磁気シールド、電子機器部品、変圧器・トランスコア、磁気センサー、インダクターなど、幅広い分野で重要な役割を果たしている磁性材料です。

磁気シールド

磁気シールドとしての応用において、パーマロイは磁気ノイズや外部磁場から精密機器を保護するために重要な役割を果たします。

例えば、医療機器や通信機器など、微細な磁場の影響を受けやすい機器は、パーマロイによるシールドがなければ、その正確性や信頼性を損なう可能性があります。 パーマロイは、不要な磁場を効果的に遮断し、機器が最適な条件下で動作することを保証します。

電子機器の部品

電子機器の部品に関しては、パーマロイの利用例は非常に多岐にわたります。

電子顕微鏡では、磁気シールドとしてパーマロイが使用されることで、微小なサンプルを観察する際の磁気干渉を防ぎます。音響および計測機器においては、パーマロイ製のシールドケースがノイズを低減し、信号の品質を向上させます。また、インバーターモーターの回転制御装置においても、パーマロイは磁気干渉を最小限に抑え、装置の精度と効率を高めるために役立ちます。

変圧器・トランスのコア

変圧器やトランスのコアとしての使用では、パーマロイはその高い透磁率と集磁作用により、効率的な電力変換を可能にします。

高透磁率は、磁場の変化を素早くコア材料に伝えることができ、集磁作用によっては、入力されたエネルギーを効率よく出力エネルギーに変換します。

この特性により、変圧器やトランスは小型化しつつも高性能を維持することが可能になり、電力供給の安定性と経済性が向上します。

磁気センサー

磁気センサーへの応用において、パーマロイは微細な磁界の変化を正確に捉えることに役立ち、磁気センサーは地磁気の測定、車両の位置や速度の検出、デジタルコンパスなど、多様な用途で高い感度と精度を提供することができます。

パーマロイを用いることで、センサーは環境の微細な変化に対しても迅速に反応し、信頼性の高い測定結果を提供します。

パーマロイの加工性

ニッケルを主成分とする合金の中でも、パーマロイは加工性に優れているものの、いくつかの特徴により加工が困難と考えられる側面もあります。というのも、この素材は特有の粘性があり、熱伝達性が低く、加工中に硬化しやすい特徴を有しているからです。

さらに、パーマロイは加工時に工具との結合が強くなりやすく、加工部分が熱を帯びるとチップや材料自体が工具に溶着しやすくなります。そのため、通常の工具を使用した加工では、工具の早期摩耗や破壊、そして加工精度の低下が起こりやすいです。

加工時には、速度の調整だけでなく、加工部位の冷却も非常に重要になります。冷却の鍵となるのは「切削油」の適切な選択と供給であり、切削油は冷却効果のみならず、工具の摩耗を減らしたり、チップの除去を助けたりするなど、難削材加工において多くの重要な役割を担います。

このように、パーマロイを高精度に加工するためには、適切な工具の選択や切削条件の設定など、蓄積された専門知識と技術が不可欠です。

パーマロイの加工は高洋電機にお任せください

パーマロイの加工の難しさは、その独特の物理的特性に由来します。粘性が高く、熱伝達性が低い上、加工中に硬化しやすい特性を持っているため、通常の加工方法では、工具の摩耗や破壊、加工精度の低下などの問題が生じやすいです。

高洋電機は、特殊合金の精密加工において豊富な経験と確かな技術を持ち合わせており、パーマロイのような難削材も高精度に加工することが可能です。私たちの技術力は、適切な工具の選択、切削条件の最適化、加工部位の冷却など、パーマロイ加工に必要なすべての要素に及びます。パーマロイの加工は、ぜひ高洋電機にお任せください。

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