PEEKとは|特長・種類・用途例・加工性について解説

PEEKとは?

高機能な熱可塑性樹脂として注目を集めるPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)。その優れた特性から、航空宇宙、自動車、エレクトロニクス、医療機器、化学産業など、多岐にわたる分野で幅広く活用されています。

本記事では、PEEKの基本情報から特徴、種類、用途例、そして加工方法までを詳しく解説します。

目次

PEEKとは?

PEEKとは、ポリエーテルエーテルケトン(Polyetheretherketone)の略称で、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類される高機能な熱可塑性樹脂です。

優れた特性を有しているため、航空宇宙産業、自動車産業、エレクトロニクス、医療機器、化学産業など、様々な分野で使用されています。特に過酷な環境下での使用や高性能が要求される用途に適しています。

PEEKの特徴

優れた耐熱性

PEEKは、非常に高い耐熱性を誇り、連続使用温度は約260°Cに達します。この特性により、過酷な高温環境下でも形状や性能を維持することができ、航空宇宙、半導体製造、オートクレーブを使用する医療機器など、温度制御が重要な産業で広く使用されています。

融点は343°Cであり、短時間であれば300°Cまで耐えることができるため、一時的な高温環境でも使用可能です。

高い機械的強度

PEEKは、広い温度帯にわたって高い引張強度や耐衝撃性を保つため、信頼性の高い材料として評価されています。さらに、ガラス繊維や炭素繊維を添加することで、その機械的強度をさらに向上させることができます。

そのため、機械部品、車両部品、精密機器など、厳しい条件下での使用に適しています。また、PEEKは繰り返しの応力にも耐えるため、長寿命の製品に利用されます。

優れた耐薬品性

PEEKは、ほとんどの酸やアルカリに対して高い耐性を持ち、化学薬品にさらされる環境でも優れた性能を発揮します。特に高温環境下での耐薬品性に優れているため、化学プラント、石油・ガス産業、製薬業界などで広く採用されています。

この耐薬品性により、腐食や劣化のリスクを大幅に減少させることができます。

難燃性

PEEKは他の多くの樹脂に比べて高い難燃性を持ち、UL94 V-0の難燃性規格を満たしています。燃焼時の発煙量や有毒ガスの発生が極めて少ないため、消防設備や電子機器の筐体、航空機の内装材など、安全性が重視される用途に適しています。

難燃性に加えて、自己消火性を持つため、万が一火がついても火の広がりを抑えることができます。

電気絶縁性

PEEKは高温、高圧、高湿度の環境下でも優れた電気絶縁性を維持します。この特性により、電気・電子機器の部品や絶縁材料として広く使用されています。高周波特性にも優れているため、高速通信機器や高性能電気機器の部品としても適しています。

また、電気絶縁性と機械的強度のバランスが取れているため、信頼性の高い製品設計が可能です。

耐摩耗性と摺動性

PEEKは高い耐摩耗性を持ち、摩耗や擦れに対する耐性が求められる部品に適しています。特定のグレードでは、高温環境での無潤滑摺動にも対応しており、機械的な可動部品やベアリング、シールなどで使用されています。

長期間にわたる安定した性能が期待でき、メンテナンスコストの削減にも貢献します。

食品安全性

PEEKは食品安全性が認められており、FDA(米国食品医薬品局)やEUの規制に適合しています。そのため、食品加工機械や調理器具、食品包装材料など、食品関連の用途にも安心して使用することができます。

また、耐薬品性と耐熱性の特性により、食品加工の過程で使用される過酷な環境にも耐えられるため、幅広い食品産業での利用が可能です。

PEEKの種類

PEEKには、様々なグレードが存在します。 一般的にPEEKと呼ばれるものは「基本グレード(標準グレード)」のことを指します。ここでは、その他のグレードについてご紹介します。

擦動グレード

擦動グレードのPEEKは、摩擦係数を低減し、耐摩耗性を向上させるために特別に設計されています。無潤滑での使用に適しており、機械的な可動部品やベアリング、シール、ギアなど、摩擦が頻繁に発生する部品に活用されます。

また、高温環境でも優れた摺動特性を維持するため、厳しい使用条件下でも長寿命の部品を提供します。

強化グレード

強化グレードのPEEKには、機械的強度や剛性をさらに高めるために繊維が添加されています。

ガラス繊維強化グレード: ガラス繊維を添加することで、引張強度、圧縮強度、剛性が大幅に向上します。このグレードは、高強度が求められる機械部品や構造部品に適しており、航空宇宙、自動車、産業機械などで広く使用されています。

炭素繊維強化グレード: 炭素繊維を添加することで、ガラス繊維強化グレードよりもさらに高い強度と剛性を実現します。加えて、炭素繊維の特性により、電気伝導性や耐熱性も向上します。そのため、極めて高い性能が求められる部品や、高温環境での使用に適しています。

導電グレード

導電グレードのPEEKは、カーボン繊維を混ぜ込むことで導電性を持たせたタイプです。静電気の発生を抑える必要がある電子機器の部品や、ほこりの付着を嫌う環境での使用に適しています。

また、導電性に加えて、PEEKの持つ優れた機械的強度や耐薬品性も維持しています。静電気対策と機械的特性の両方を必要とする用途に最適です。

難燃グレード

難燃グレードのPEEKは、標準グレードよりもさらに高い難燃性を持つように設計されています。UL94 V-0の難燃性規格を超える厳しい基準を満たすことができ、安全性が特に重視される用途に適しています。

航空機内装材、鉄道車両部品、電子機器のハウジングなど、火災リスクを最小限に抑えたい環境で使用されます。また、燃焼時の発煙や有毒ガスの発生が少ないため、より安全な作業環境を提供します。

PEEKの用途例

PEEKは、その高い耐熱性、機械的強度、耐薬品性、電気絶縁性などの特性により、過酷な環境下での使用や高性能が要求される用途に適しています。特に金属部品の代替材料として、軽量化や性能向上に貢献しています。

エレクトロニクス産業ICウエハーキャリア
半導体装置の洗浄治具
液晶製造装置部品
電子絶縁ダイアフラム
高温コネクタ プリント
基板
自動車産業オイルシーリング
高温部位の部品
金属部品の代替材料(軽量化と性能向上のため)
航空宇宙産業航空機コンポーネント(アルミや他の金属部品の代替)
宇宙機器部品(低アウトガス特性を活かして)
機械製造バルブやポンプ(石油、天然ガス、超純水などの輸送装置)
石油採掘機器
医療機器耐薬品性と高温滅菌が可能な特性を活かした医療機器部品
化学産業高温・高圧環境下で使用される化学装置部品
食品産業食品製造装置部品
その他高絶縁端子部品
原子力関連機器

PEEKの加工性

PEEKは加工性に優れ、寸法安定性が高い材料です。耐熱性が高く、熱による収縮も起こりにくいため、安定した加工を行うことができます。

しかし、その一方でPEEKは非常に硬い素材であるため、フライス加工の際に欠けやすいというデメリットもあります。特に細い刃物を使用する場合、刃物が折れるリスクもあります。そのため、他の樹脂素材に比べて慎重に加工を進める必要があります。

PEEKの加工は高洋電機にお任せください

高洋電機では、PEEKの加工に必要な高度な技術力と経験を持っています。複雑かつ困難なニーズにも、自信を持って対応しています。

当社は、最先端の技術を利用し、PEEKのユニークな特性に合わせた加工方法で、お客様の厳しい要望に応えます。

精度と品質を妥協することなく、最良の加工技術を提供することを約束します。お気軽にご相談ください。

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